まとめますと、標準的なマジカル・イリュージョニズムの断絶は、主に操作方法を見せない美学から見せる美学への移行、さらには解体とディバイジングへの移行により達成されています。グローバリゼーションは現在、様々な歴史的段階における大規模な人類の統合相互接続、及びハイブリッド化の長期的過程と見なされ、社会学者N.ピエルテルスはそれを「グローバル・メランジェ」（global mélange）と呼んでいます（ピエルテルス2019年）。1990年代前後に顕在化したグローバリゼーションは、経済的な国際化と資本主義的市場の広がりを強調しましたが、今では経済的、政治的、及びこの章で扱う文化的分野、即ち文化的グローバリゼーションに、分類されています。◆シアターコラボレーション制作（以下コラボ）は文化的グローバリゼーションの一つになります。多様性を追求する芸術に於いて、国内および国際的なコラボに展開される様々なドラマツルギー戦略をここで取り上げます。ローカルなイントラカルチュラル・シアターの多様性の事例には鄭チョン義ウイシン信作『ドールズタウン』、海外とのコラボの事例には世田谷パブリックシアター及びコンプリシテ（英国）の演出家Ｓ.マクバーニーのコラボ『春琴』を主に扱います。まず、より一般的に見られる方法であるローカルなものから始めます。日本の芸人は伝統的に、特定の様式美を追求し、完成しようとする意欲は高く、その目的のために強く団結してきました。スピード、スタイルの多様性、横の繋がりを重視する時代の変化の中で、このような特例意識は薄れ、他のアーティストや劇団とのコラボを奨励していますが、地元の多様性からの刺激を求める姿勢には、いまだに警戒心を残すところです。在日韓国人である鄭義信の『ドールズタウン』（2007年初演、2017年再演）は文化的マイノリティの解放的なアイデンティティ形成に向けて機能している国内プロジェクトの一例です。作品は第2次世界大戦中の関西の様々な少数民族の絶望的な状況を描いています。テーマは、前近代のカースト制度による社会的烙印の傷跡、20世紀のポストコロニアルの反感、第2次世界大戦の敵対行為や偏見等が、この劇の中でぶつかり、差別の坩堝となっています。◆グローバル化した世界に於けるインターカルチュラル・シアターの定義にはインドの演劇批評家ラスタム・バルーカ（Rustom Bharucha）によるものが基本です。インターカルチュラルシアターとは、「文化と舞台芸術の伝統の意図的な出会いから生まれた」ハイブリッドであり、「国境を越えて、市民権とアイデンティティの代替的な形態を探求し、批判する自由度は持ちながら、国家が何らかの仲介をする可能性もある」（ロウとギルバー第四章「コラボレーション制作：ローカルとグローバル」- 70 -
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