- 55 -特集Ⅰ：日本におけるパンチ＆ジュディ再考年10月には、子どもに対するいかなる体罰も、スコットランドでは法的に禁止となり、話題となった。このような状況でパンチ＆ジュディも、いよいよ見せられなくなるのでは、との危機感を共有し、今日的な視点から書かれた台本である。あやうい夫婦と、そこに出現した脅威としての赤ん坊を、グローブはパンチ劇に活かしている。パンチ＆ジュディに魅せられ、それを日本で見せたいと思う上演者がいるかぎり、日本でパンチ＆ジュディは生き永らえることだろう。また、文学作品での描写・言及としても、パンチ＆ジュディは日本に現われてきた。山本昌代「春のたより」（1987）、翻訳作品ではダイアナ・ウィン ジョーンズ『トニーノの歌う魔法』（2002）、ベン・アーロノヴィッチ『女王陛下の魔術師』（2013）など。映像をとおしては、『バーナビー警部 人形劇の謎』（2004）や『ゴーン・ガール』（2014）で、パンチ&ジュディは背景以上の役割を果たし、物語の起爆装置となっている。これらについては稿をあらためて紹介したい。註1.藤田富士男＜人形座＞「佐野碩研究（３）」『悲劇喜劇』1981年4月号、pp.90-91.2.バリー・スミス（1984年来日）、ネヴィル・トランター（2019年来日）などは、パンチ劇をレパートリーに入れる人形劇人である。3.ロバート・リーチ、岩田託子訳『「パンチ＆ジュディ」のイギリス文化史』昭和堂、2019年、p.61.4.南江二郎「宝塚での試演に就いて」『人形芝居』第１巻第２号、郷土演劇協会、1933年、pp.44-47.（尚、二郎は治郎のペンネームであり、以下表記にならう。）5.南江二郎「宝塚人形劇場に就て」『歌劇』1931年８月号、pp.24-27.6.岩田託子＜ミスター・パンチと天狗――鼻が取り持つ御縁＞「メディアの中のパンチ（３）完結――日本における『パンチ』誌とパンチ＆ジュディ」『中京大学文学部紀要』28巻第3・４号、1994年、pp.132-158．7.高瀬嘉男「関西における児童の人形劇運動」『人形芝居』第１巻第2号、郷土演劇協会1933年、p.51. 潟見英明の情報提供。8. 『宝塚歌劇四十年史』、宝塚歌劇団出版部、1954年、p.258．9. 『歌劇』1932年８月号、p.107.10.『歌劇』1932年９月号、p.60.11.『歌劇』1932年１月号、pp.38-39.12.『歌劇』1932年１月号、p.41.13.『脚本』第八号、脚本社、1934年9月、pp.91-92. [図10 ]©NPO法人語り手たちの会
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