- 54 -は、ここからもはかりしれる。なお、宇野を運命に導いたジャン・ブッセル氏邸は、パーシー・プレスの孫娘エイドリエンヌに問い合わせたが、不明である。【謎4】上記引用文中の最後の一文「人形劇をやってる人間にとって魅力的な演し物故、ついついやる気を起しましたが、本物になるには五年先か十年先か……。」は、人形劇人がパンチにアプローチする、その機微を活写している。それからさらに15年後、ひとみ座がパーシー・プレス・ジュニアを招聘した際に、観客の理解の一助にと、前座としてパンチ＆ジュディを伊東史朗に日本語で上演させた発案者も宇野であった。これが伊東史朗のパンチ劇の始まりであった。６．まだまだ続く日本でのパンチ＆ジュディ ――その後のひとみ座、ホリプロミュージカル、 テラブレーション宇野小四郎、伊東史朗と続いた、斎藤徹作ひとみ座のパンチとジュディ人形は、現在の代表中村孝男によって、2019年9月には遣われるようになった。今後も上演機会を重ね、新たな歴史を記していくことだろう。ミュージカル『スクルージ』は、チャールズ・ディケンズの『クリスマス・カロル』に材をとる、年の暮れの定番である。ロンドンの光景につきもののパンチ＆ジュディ遣いを登場させ、2015年・2019年には文学座の高橋ひろしが演じた。ホリプロ美術係が担当した、ちょっと小ぶりな人形を手に、19世紀ロンドンの状景を醸しだしている。[図９]また2019年には、いまだかつてない現れ方をパンチは果たした。アメリカ由来の「語りの祭典＝テラブレーション」(telling+celebration) のために、英国から日本を訪れたDr.ニコラ・グローブは、題材をパンチ＆ジュディに採った。グローブはオクスフォードで英文学を学び、その後、知的障がい児の療育に携わってきた経歴をもつ。子ども時代に遊んだパンチ人形を実家の屋根裏から見つけ出し、それを用いて、パンチ文化のない日本の子どもたちに、言語の壁を越えて語りかけたのだ。2012年パンチ＆ジュディ350年祭の活発なメンバーであり、来日経験もあるグリン・エドワーズのもとで、グローブは数日かけて戦略を練り、オリジナル台本を作り上げた。＜付録＞3021世紀英国社会はますます変化している。たとえば2019[図９]高橋ひろしとパンチとジュディ2019年12月13日日生劇場
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