- 53 -特集Ⅰ：日本におけるパンチ＆ジュディ再考ところが突然、ボケ役の人形を馬鹿あつかいしていたツッコミ役の人形が「笑っているお前たちこそ本当の馬鹿者だ！」とお客をやっつけだしたのだ。お客もまけずに人形に言いかえすといった具合で、俄然客席がわきあがる。これは私たちがパンチ劇という手法で観客の子どもと人形とがはげしく言い合いをして、次第に子どもたちを興奮させてゆくのとよく似ている。28上演に即して「パンチ劇」エッセンスを水田はこのように理解していた。遡って1951年のプッペの公演も、なんといっても教習所の山根先生の舞台であるだけに、水田外史は観ていたように思う。５．プルチネラでのパンチ＆ジュディ ――宇野小四郎と斎藤徹デビュー南江の『ファウストとパンチ』が出版された2か月後に、その出版に深く関わったひとみ座がパンチ劇を上演していた。[図８]渋谷に設けた「人形劇を見せるスナック」「プルチネラ」を会場に、南江の訳を使い、美術は斎藤徹、構成・上演は宇野小四郎（1929-2015）であった。1972年11月24日から12月11日の夕方６時半より、片岡昌脚本の「プルチネッラの恋」の次の演目が、「パンチとジュディ」であった。火・木曜は休演だったにしろ、上演回数は14回になる。上演に至った経緯・動機を宇野小四郎がプログラムに寄稿している。人間、知らないということも不幸ですが、なまじ知っているということも不幸なことです。ロンドン郊外は、テムズ河のほとり、ジャン・ブッセル氏邸で、本物中のホンモノ、パンチを使わせては、無冠の帝王と言われるパーシー・プレスの妙技を目のあたりに見てしまったのです。操作軽妙、間合絶妙、筋立巧妙、いや面白い、面白いと触れて歩いたら、一つやってくれと言われました。人形劇をやってる人間にとって魅力的な演し物故、ついついやる気を起しましたが、本物になるには五年先か十年先か……。29翌1973年にプーク人形劇場がパーシー・プレスを招聘するに至った機運[図８]「凄いものを見たという印象」©石井秀明（パペットパーク）
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