'20 日本の人形劇

54/168

- 52 -大妻女子大学の人形劇サークルの指導にあたり、学園祭での上演を続けていた。それを観て育った姪の藤島美菜が大学生時代には、余興としての一人人形劇を何度か、美術は山根が引き受けて上演にこぎつけていた。演者にも観客にも洒脱な趣向が印象を残す上演だったようだ。24戦後の一時期、鉄道教習所で、山根は大学でいう教養科目を担当していたが、その時、水田外史と師弟関係にあったようで、山根家に交流の記憶が残っている。水田外史 (1927-2000)は広島に生まれ、小学校6年生で東京に移住した。工業学校卒業後鉄道教習所で2年間の全寮生活を送ったが、その時に演劇を志し、ついには1947年20歳でプークに入団した。1963年プーク退団後に「ガイ氏即興人形劇場」を始め、内外で高い評価を得た。専ら「日本の」手遣い人形を模索した水田外史だけに、しばしば「パンチ劇」を引き合いにだして語る言葉が残る。劇団が人気を博すなか1972年に、活動を見つめなおすためにハワイからアメリカ、ヨーロッパからトルコへいき、それからインドへ入るひとり旅の途上、イギリスで出会ったパンチ＆ジュディについて、次のように記している。動きの派手なパンチ劇。それが正義が悪に勝つというおはなしでもなく、やさしさや愛が尊いっていう劇でもない。・・・こういう劇を子どもの誕生日にするんだから。日本では考えられないことだ。そして「なんだか励まされた」と述べている。25水田によれば、パンチ劇は二点で際立つ。まず、「自分の手で直接にパンパンと力強く」叩く要素である。26手遣い人形というのはヨーロッパ的なもので、日本にはない。つまり、パンチ劇というのは日本の中では育ってこなかったんですよ。・・・これからの日本は、ヨーロッパ的にパンチ棒を持って、コテンパンに相手を叩きのめす、というストレートに攻撃的なものをしなければいかんというので、プーク時代に川尻泰司さんが何かにつけてやろうとした。そこに手のエネルギーが出てくる、そこに魅力があるんだ――と、言ったんだけど、なかなかそれは日本には定着しなかった。27二つ目は、観客参加の手法を「パンチ劇」に関連づける点である。インドネシアのワヤン・ゴレについても、パンチを引いて次のように語っていた。