- 51 -特集Ⅰ：日本におけるパンチ＆ジュディ再考の夢を実現すべく30歳になる時に、人形劇団テアトル・プッペをスタートさせ、少年の心を震わせた「パンチン・ジューデイ」を上演する経緯を語っている。二点気になる謎を記しておく。まず、プログラムでのタイトルは「パンチとジュディの悲劇」となっている。喜劇的側面が削られたのだろうか。【謎2】最も有名な出版台本である、クルクシャンク挿画のJ. P. コリアーによるテキストは『パンチ＆ジュディの悲劇的喜劇あるいは喜劇的悲劇』で、悲劇とのみとらえてはいなかった。そしてもう一点は、ほぼ半年後の1952年6月に、読売ホールにおいて２日間で２公演した際の演目が、「壊れ橋」と「ドクトル・フアウスト」だけで、「パンチとジュディの悲劇」がはずされている点である。上演時間を短縮されたなど、なんらかの事情があったならば、知りたく思う。【謎３】テアトル・プッペで舞台袖にいた吉本信一の考察21を紹介したい。プッペのパンチ＆ジュディは、日本式に膝まずくのではなく、英国式箱舞台にならうものであった。蹴込の上に額縁をつけて、腕を伸ばして人形を操り、声色を使い分け、15分くらいの短いものがパワフルに演じられた。公演で冠におかれたのも、パンチ＆ジュディを人形劇の代表と位置づけたからだ。山根版パンチ芝居に登場したキャラクターについては、「悪魔」の印象が強く、人形・演技とも「ファウスト」の「メフェイストフェレス」に通じ、山根のお気に入りであったようだ。「喜劇」と記さなかったのは、「青髭」「ドン・ファン」に通じるような、残酷さが際立つパンチだったからではないか。1951年当時の時代背景から、反響は必ずしも良くなく、パンチ＆ジュディの上演を続けることは諦めたのではないか。以上が吉本の考察である。たとえば、藤田金之助のオリジナル脚本「パンチとジュディ」は、凄惨なまでのプロット展開の最後に、「平和な世の中を作ろう」というメッセージが投げかけられる。このメッセージゆえに、かろうじて観客はパンチ劇を受け入れる、と藤田は見込んだのだろう。吉本の云うとおり、山根が人形劇の代表としてパンチ&ジュディに皮切りを務めさせたのならば、当時の日本の観客には受け入れがたいところがあったのかもしれない。1955年に山根が東映に移り、取り組んだのが日本初長編カラーアニメーション映画となった『白蛇伝』（1958年10月公開）であった。22他に教育映画部で提出した企画書の中に「パンチとジュディ」もあった。23映像化は実現しなかったのだが、パンチ芝居を表に出そうと努めたことに変わりはない。山根能文は、その後、大学での教職に就いた。和辻哲郎門下にあり、倫理学・美学を教授した。章弘の名での著書『羊毛文化物語』（1989）には、底に英国風俗が透視できるが、人形劇人の気配はない。しかしながら近親者によると、人形劇との関わりは終生続いていた。本務校ではないながら、
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