- 50 -なホールでも公演を行ってきた。創立３年目には、芝児童館で「西欧人形劇古典作品傑作特集」と銘打ち、１.イギリス パンチとジュディの悲劇 ２．フランス 壊れ橋（影絵）３．ドイツ ドクトル・ファウスト（４幕）を、1951年11月24日・25日の土・日曜日に13時半と17時の２回ずつ公演した。[図６]「西欧」「古典」として妥当な選定である。作・演出・美術を山根能文が担当している。プログラムに寄せられた「パンチとジュディの印象」[図７]は、簡にして要を得た名文である。20少年とパンチ芝居との出会いは、官僚であった父の赴任に伴いロンドンで過ごした幼年時代に遡る。「よく街頭や公園の片隅で移動式の細長い舞台の上で」演じられる「パンチン・ジューデイ」を兄弟で「驚異と興奮を以て見入つたものであった」と記している。「パンチン・ジューデイ」とは、英国で耳にする発音そのままで、この音のうつしは実に正しい。イギリス史家の川島昭夫（1950-2020）も、「パンチン・ジューデイ」と呼んでいた。さらには、20世紀戦間期のロンドンに暮らす裕福な少年の特権のままに、「街の玩具店の棚に下がっているこの一組の人形を購い求めては、家に帰ると兄弟して、街で演ぜられたあの痛快な演り方を真似て、・・・すっかり熱中して了い」寝食を忘れたと云う。「兎に角、何もない舞台にいきなり下から奇怪な面相をした大きな顔の人形が現われて、それが動く、口をきくもうそれ丈けで少年達は呆然としてしまう。まさしくこれは一つの驚異だ！而も一つは凄みのある太い声で、一つはとぼけた金切のうら声で、痛烈な警句と円やかな諧謔の溢れた対話がはずんでゆく。」実演を英国で観て、それを日本語で表現した印刷物としては、本邦初だろう。特に、パンチ独特の声、スワッズルの使い分けを耳に留めた上での記述は秀逸である。生活のなかで「パンチン・ジューデイ」に遭遇した少年の感受性が、このエッセイになった。この記事自体が「人形劇は少年時代からの私の夢であった」と始まり、第二次大戦時の従軍体験を経て、永年[図６]テアトル・プッペ プログラム ©人形劇の図書館[図７]演者の足が地についていないところが「いきなり下から現れ」た感をかもす ©人形劇の図書館
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