- 47 -特集Ⅰ：日本におけるパンチ＆ジュディ再考高ぼんち」が上演された。上演日にあっても上演回数が1回というのは、開幕時の１月の記録と比べると、ずいぶん減少している。とはいえ、1月当初より変わらない点は、公演が４演目で成り立ち、人形歌劇は最後に置かれる組みたてである。11また、「座席券子供十二才以下無料（付添三十銭）」12とある。当時は本公演の入場料も30銭だったが、コドモの国には大人一人30銭を支払うと、複数のこどもが無料で入場できたわけで、割安の子守になっただろう。さて「鼻高ポンチ」4枚の写真に戻る。ここで操演に奮闘努力しているのはタカラジェンヌなのだ。操演方法については、ウニマセミナーVOL.7では、糸操りや指人形ではなく複数演者による棒使い説が浮上した。「操り手になる生徒だが、・・・毎月、全然経験のない人達がこれにあたった。」「自分達が上手に操人形を遣えない事に人知れずいらいらしていた。」とは、自負の強いタカラジェンヌらしい。それを「僅か五日間の稽古で、ともかくも、一般観客の前に示し得る迄の事をやってくれたものだと、心から感謝している」と南江が賞賛している。さすが潜在能力のきわめて高い乙女たちならではで、「勝気な生徒達は、時に」南江を「頼りない先生」と嘆いていたらしい。その体験から２年ほど過ぎて、南江が記した次の文には、自責の念の投影が読み取れる。「僅々一ヶ月乃至数ヶ月の準備に依る稚拙極まる人形芝居を公演して、恬として慚ぢざる多くの新興人形劇団なるもののある事を想起せずにはゐられない。」13およそ30年後に、宝塚での経験をふりかえって語る時には余裕もあり、「人形製作は村井武生氏、舞台ならびに人形のデザインは小松栄氏ら」と協力者名を挙げ、また、未来のスター候補だった当時の生徒３名の名前を春日野八千代、難波章子、社敬子と、特に記している。14たとえば、人形劇公演時点で16歳の春日野八千代は、月組生徒だったから、この写真のパンチを操ったのでは？・・・と想像するだけでも楽しい。日本でのパンチ上演を記録に残す最初となった写真が、こんなにも華やかなエピソードに彩られていたとは、幸運である。３．藤田金之助のパンチ＆ジュディの由来藤田金之助（1902-97）の人形劇活動についても、おって記録が見つけられた。15二科（展）の画家であるのに加えて、1932年5月28日に大阪市の恵美第一小学校において大阪星の会主催「チンピラ旅日記」（4幕）を上演したのを皮切りに、その後も新作の人形劇発表を続けていた。これは、ちょうど南江が宝塚で人形劇上演に奮闘していた時期と重なる。翌1933年初夏に、藤田も活動を休止したと報告されている。休業の理由は詳らかではな
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